TMDS系 DVI・HDMI

TMDS系インターフェイスは、ピクセルクロック伝送用一組と、その10倍の頻度で動作するデータ伝送用三組の信号線を用いる。データ伝送一組では1クロックあたり10bitの伝送が可能ということになるが、10bitのうち2bitはパリティとして使われるので、三組で実際に伝送できるデータは1クロックあたり24bit。RGB各色8bitであれば、1クロックで1ピクセル分の伝送ができる。(各色10bitなら1.25倍、12bitなら1.5倍、16bitなら2倍のTMDSクロックが必要。)

デジタルRGB/TMDSシングルリンクDVI

データ伝送はTMDSを基本とし、DDC/EDIDでディスプレイ情報の取得と、ホットプラグを可能にしたもの。TMDSクロック上限は165MHz。1999年DVI1.0策定当時の技術では、それ以上クロックを上げるのが難しかったらしい。

2000年あたりからDVI出力機能のGPU統合が始まり、2002年にはMatrox、ATi、nVIDIAの三社が最低一系統のDVIを実装するに至った。しかし、LCDパネルがSXGA→UXGAと高解像度化・・・より高クロックな伝送が要求されるに従って、各社内蔵DVI出力の品質のばらつきが指摘されるように。(ちと長いけど参考に→Tom's hardware ExtremeTech AnandTech)
 対応策として各社は、グラフィックスドライバ側でDVIの出力解像度を制限したり、ビデオカード基板上により高品質な外部トランスミッタを載せる等の処置を取った。

RadeonX800(製品名失念)の基板上に実装されていたSiI1162。R420はRAMDAC二系統、TMDSトランスミッタ一系統を内蔵。セカンダリDVI出力には、このような外部チップを用いた


またこの時期、VESAにより非CRTを前提としたモニタタイミングの見直しが行われている。

「今までは、CRTの電子ビーム移動待ち時間を含めてピクセルクロック計算してたけど、LCDなら電子ビーム使わないから、帰線期間もっと短くできるよね」ってことで、タイミング規格CVTにReduced Blankingが含まれることに。
 これによって、DVI1.0策定時点のモニタタイミング規格では、デュアルリンクが必要だったWUXGA@60Hzの、シングルリンクでの利用が標準化された。

帰線期間削減はDVI1.0規格の中で既に言及されており、CVT-RB策定前から各社適当にReduced Blankingを適用していたようではある。これは、Asus V9520 VideoSuiteのDVI-UXGA出力時のビデオタイミング。左側が基板上のSiI162トランスミッタ、右側がNV34内蔵トランスミッタのもの。ActivePixelsは変わらないものの、水平同期信号のFrontPorch/SyncWidth/BackPorchは大きく異なる。


結局のところ、主要GPUベンダーの内蔵トランスミッタがUXGA/WUXGAを出力するに十分な品質を得るようになるのは2004年以降。Apple等はUXGA/WUXGAを60Hz-24bppで出力可能なDVIを、便宜上フルシングルリンクと呼んだ。

シングルリンクDVI出力機能内蔵開始時期とフルシングルリンク対応時期
AMD(ATi) Intel Matrox nVIDIA
2008 フルシングルリンク・以降最低一系統のHDCP対応 G45/Eaglelake 以降最低一系統のHDCP対応 GF9Series/G9x
2007 以降最低一系統のHDCP対応 HD3k/R6xx
2006 X1950XTX等ハイエンドからシングルリンクHDCP対応開始
2005 ハイエンドからHDCP対応開始 GF7Series/G7x
2004 フルシングルリンク GF6Series/NV4x
2003 外部チップによる?フルシングルリンク P650/ParheliaLX UXGAまで GFFXSeries/NV3x SiliconImage・シングルリンク225MHzトランスミッタ発表 VESA・CVT Reduced Blankingの標準化
2002 SXGAまで? GF4Ti,MX Series /NV2x, NV1x Apple・CinemaDisplayHD(WUXGA)ディスプレイ登場
2001 フルシングルリンク? RadeonVE/RV100
2000 SXGAまで G450 SXGA未満? GF2GTS /NV15 SiliconImage・HDCP対応PanelLinkトランスミッタ発表
1999 DVI1.0策定 SiliconImage・165MHzDVIレシーバ発表
1998 SiliconImage・112MHzDVIレシーバ発表

DVI規格は1999年以来更新されておらず、現在に至るまでシングルリンク165MHzの上限は変わっていない。

出し側としてありうる端子
DVI-I/D
最近ではDVI/HDMI受け側回路の1チップ化が進んでいるおかげか、DVI端子受けで音声が出せるディスプレイ製品もあるようで。
HDMI
HDMIプラグケーブルにネジやノッチなどの装置に固定する仕組みが無いのは、子どもがケーブルに足を引っかけてもすぐに抜けるように、との配慮からきているらしい。
MiniHDMI
HDMI端子のモバイル向け小型化版。GeForce400シリーズ以降で採用された。1スロットビデオカードでDVI*2+HDMIの端子構成だと、プラグが物理的に干渉して差し込めないのでな。
 なお似た名前でMicroHDMIがあるが、それはMiniよりもっと小型な端子で、スマートフォンやタブレット系製品の出し側端子として用いられている。
DisplayPort
パッシブアダプタでDP to DVI/HDMI接続可能な製品にはDP++ロゴを付けるべきなのだが、ロゴ表示が全然普及していないのが現状。AMDやnVIDIAは最初からデュアルモード対応済み? 
DMS-59
高密度型DVI端子。通常のDVI端子一つ分の面積で、DVI-I二つ分の役割を果たす。LowProfile等ハーフハイトの1スロットカードでは、DVI端子を二つ並べることができないので開発されたもの。QuadroやFireGLなど、主に業務用カード系で採用されていた。なお、デュアルリンクDVI出力には対応しない。
受け側としてありうる端子
DVI-I/D
UXGAパネル時代までは、DVI-I端子を採用するディスプレイ製品も普通にあったが、近年ではDVI-DとD-Subに端子を別けて実装するディスプレイ製品が多い。
HDMI
POST時はともかく、正規(標準VGAドライバ等の汎用ドライバではなく)のディスプレイドライバをインストールした後なら、出し側HDMI端子→受け側DVI端子でも、特に問題なく映せるはずだが・・・。
デジタルRGB/TMDSデュアルリンクDVI

「クロックを上げられないなら信号線を増やせばいいじゃない。」ということでデータ信号線を倍にする(シングルリンクTMDSトランスミッタをペアで用いる)ことで帯域を倍にしたもの。DVI1.0策定当時はDVI受けのCRTディスプレイを想定していたようだが、一般に普及するようになったのは、WQXGAパネルを使ったLCD製品が登場した2004年以降。

WQXGAやWQHDそしてFullHD@120Hzなどが、デュアルリンク接続を必要とする画面モードになる。

デュアルリンクDVIとしての動作が期待できるのは、出し側/ケーブル/受け側ともデュアルリンク対応の場合で、いずれかがシングルリンクの場合、シングルリンクDVIの範囲内で動作する。

デュアルリンクDVI対応開始時期
AMD(ATi) nVIDIA
2008 GF9x00Series /G9x 以降最低一系統対応・HDCPのデュアルリンク対応
2007 HD3kSeries /R6xx 以降最低一系統対応・HDCPのデュアルリンク対応?
2006
2005
2004 X850XT /R480 ハイエンド品から対応開始 GF6800Ultra/NV48 ハイエンド品から対応開始 Apple・CinemaHD Display(WQXGA)登場

Intelは今のところデュアルリンクDVI対応は行っていない。

出し側としてありうる端子
DVI-I/D

レセプタクル側においては、デュアルリンク/シングルリンクとも端子の見た目は同じピン数が異なるのはケーブル(プラグ)側端子だ。

メーカーがそれと明示していない場合、出し側DVI端子がデュアルリンク対応なのかどうかは、実際にデュアルリンクケーブルを接続して起動してみないと分からない。今からでも遅くないから、DVI端子のデュアルリンク/シングルリンク色分けを標準化して欲しいところ。

受け側としてありうる端子
DVI-D
デュアルリンク接続を必要とする、WQXGA/WQHDクラスのLCD製品が、DVI-I端子をレセプタクルとして用いることはまず無い。
デジタル色差/TMDSシングルリンクHDMI

2002年バージョン1.0が策定された、DVIの上位規格インターフェイス。
 映像と音声をケーブル一本で送れる/HDCPという伝送データのコピー保護機能を実装できる、これらの点が評価され、最初は家庭用TV等家電系を中心に採用。PCに採用されたのは、RGBフォーマットが採り入れられたVer1.2から。2006年頃から徐々に独自にHDMI端子を実装したビデオカード製品が現れ始め、製品族として対応が始まったのは2007年のRadeonHD2kシリーズが最初。
 自作PC板でも2005-6年あたりは、PCでHDMIなんて流行るわけねーよ、と冷ややかな雰囲気だったが、HDMIがPS3に採用されて以降、PC向けとして販売されるディスプレイにもHDMI端子採用製品が増加。2009年のアナログ色差(S端子)出力廃止により、DVIに次ぐディスプレイインターフェイスの地位を確立した

HDMI関連の流れ
AMD(ATi) Intel nVIDIA
2012 HDMIビットレート3Gbpsを明示 /SouthernIslands HDMIビットレート3Gbpsを明示 /Kepler 3840*2160 TV発売
2011 HDMI1.4a-TMDS225MHz /Llano SiliconImage・TMDS300MHzポートプロセッサ発表
AnalogDevices・TMDS297MHzレシーバ発表
2010 HDMI1.4a策定
2009 HDMI1.4策定
2008 HDMI1.3b /RS780 HDMI1.3 /Eaglelake HDMI1.3a /GT21x HDMI1.3c策定 SiliconImage・225MHzHDMI-PHYチップ
2007
2006 HDMI1.3a策定・シングルリンクで165MHz以上のTMDSクロック Sony・PS3発売
2005 HDMI1.2a策定・PC系との互換性
2004 HDMI1.1策定 フルハイビジョン(1080p)TV登場
2003
2002 HDMI1.0策定

本来ならそれぞれのGPU世代別にHDMIで使える機能を列挙したかったんですけど・・・。ディスクリートGPUの詳細資料がないので、GPUベンダーの列内がスカスカに。しかたないね!

現状、GPUベンダー達がサポートしていないHDMIの諸機能
名称 採用Ver 概要と具体例
Consumer Electronics Control 1.0 HDMIで接続された相手機器の操作。 (海外ではPCのHDMI出力にCEC信号を付加できる機器が売っているみたいね。 ちなみにHDMI19ピンプラグとSL-DVI18ピンプラグ、一本足りないピンはこのCEC用ピン。)
HDMI Ethernet Channel 1.4 最大100MbpsでのLAN通信。 録画機能付きTVとビデオレコーダ間の録画データ転送、HDMI機器間のネット接続共有など。
Audio Return Channel 1.4 音声データの双方向通信。 レコーダ → AVアンプ → TV の様な接続形態においてTV側で受信した放送音声をAVアンプで再生する場合など。
出し側としてありうる端子
DVI-I/D
SouthernIslands/Keplerクラスは、もうDVI端子出しでもHDMI端子出しでも(シングルリンク165MHzの範囲でなら)できることは一緒と考えていいんじゃないでしょうかね。音声もHDCPも、D-Sub以外全端子有効みたいだし。
HDMI

nVIDIAコンパネでのフォーマット選択。HDMI端子受けなら、RGBか色差かのフォーマット選択ができるはずだ。

こちらはRadeonのフォーマット選択。これもHDMI端子受けでなければ設定項目は出てこない。

MiniHDMI
to HDMIの変換アダプタを別途購入しなければいけない場合は、隣のプラグケーブルとのクリアランスに注意しよう。ビデオカード以外を前提としてデザインされた変換アダプタ製品には、そういった面が全く考慮されていないものもある。
DisplayPort
受け側としてありうる端子
HDMI
家庭用TVの一部には、色差フォーマット固定な製品もあるとか。

SiliconImage、TexasInstruments、AnalogDevices等の提供しているHDMIトランスミッタ/レシーバのスペックを見ていくと、明示しているTMDSクロックはだいたい以下の四つ。参考までに、そのクロックで対応しうる画面モードを挙げておきます。

TMDSクロックとHDMIの画面モード例
MHz 画面モード 注釈
~80 1366*768@60Hz-24bpp 1920*1080@30Hz-24bpp HDMI登場初期、DVD-Video時代の家電系機器。Standard HDMIケーブル(想定~74.25MHz)で対応できる範囲。フルでないハイビジョン。
~165 1920*1080@60Hz-24bpp 1920*1080@30Hz-48bpp 一般的な1080pフルハイビジョンTV。HighSpeed HDMIケーブル(想定~340MHz)が必要な範囲。視差立体視/DeepColorも、1080iまたは720p解像度ならこのクロックの範囲内で可能。HDMI1.3/1.4だからといって、必ずしも165MHz以上のTMDSクロックで駆動してるわけじゃーない。
~225 4096*2160@24Hz-24bpp 3840*2160@25Hz-24bpp 1920*1080@60Hz-36bpp HDMI1.4策定時に追加された画面モード。4k入力はともかく、FullHD@60HzにおいてDeepColorサポートしてる家庭用TVってどれだけあるんでしょうか。
~300 4096*2160@30Hz-24bpp 1920*1080@60Hz-48bpp 1920*1080@120Hz-24bpp ここ1-2年で実用の目処がついたらしいシングルリンク300MHz駆動。氾濫しているバルクHDMIケーブルは、このクロック駆動に堪えられるのだろうか。 

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